全国ため池調査(2003)水生植物データベース
志賀 隆 1)・加藤 将 1)・横井謙一 2)・角野康郎 3) (編)
1) 新潟大学教育学部
2) 日本国際湿地保全連合
3) 神戸大学大学院理学研究科(名誉教授)
調査の目的と概要
ため池は水田の灌漑用水を貯水するために築造された水域であると同時に、生物多様性に富んだ身近な水辺です。築造以来の長い年月の間にさまざまな動植物が移り住み、人間による利用や維持管理と共存しながら、独自の生態系を形成してきました。しかしながら、生き物に関する調査が行われているのは、全国にあるため池のほんの一部に過ぎません。生物多様性の観点からため池の価値を見直し、そこに息づく生き物を記録して残すことは急務といえます。本データベースで公開する水生植物のデータは、そのような背景のもと2003年に行われたため池調査の成果です。日本のため池の水生植物相を把握することを目的とし、環境省が選定した「重要湿地500(※)」に含まれるため池群を中心に調査が行われました。調査されたため池は全国15地域、総計399ヶ所(表)におよびます。平野部・盆地・丘陵地帯・中山間地と多岐にわたる立地環境、面積規模も数へクタールの大規模なものから数アール程度の小規模なものまで、さまざまなため池が調査対象として選ばれました。
表.15地域における調査地数と記録種数
| No. | 調査地域区分名称 | 県 | 調査者 | 調査地数 | 記録種数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 田谷地湖沼群・荒沢湖沼群 | 宮城県 | 上野雄規 | 13 | 19 |
| 2 | 横手市・仙北郡にかけてのため池群 | 秋田県 | 高田順 | 17 | 64 |
| 3 | 河島山麓(北村山地方)ため池群 | 山形県 | 沢和浩 | 8 | 67 |
| 4 | 三和村ため池群 | 新潟県 | 志賀隆 | 37 | 59 |
| 5 | 木曽三川地域の水路・ため池群 | 岐阜県・愛知県 | 浜島繁隆 | 53 | 46 |
| 6 | 加西市ため池群 | 兵庫県 | 角野康郎 | 18 | 37 |
| 7 | 明石市大久保町周辺のため池群 | 兵庫県 | 角野康郎 | 14 | 18 |
| 8 | 田辺市・日高郡ため池群 | 和歌山県 | 北野一夫 | 23 | 53 |
| 9 | 宍道湖湖北ため池群 | 島根県 | 國井秀伸 | 20 | 44 |
| 10 | 世羅台地ため池群 | 広島県 | 実光紀之 | 73 | 79 |
| 11 | 賀茂台地のため池群 | 広島県 | 下田路子 | 31 | 60 |
| 12 | ジョガマル池 | 徳島県 | 木下覺 | 3 | 22 |
| 13 | 豊島ため池群 | 香川県 | 久米修 | 8 | 19 |
| 14 | 満濃池周辺のため池群 | 香川県 | 久米修 | 21 | 65 |
| 15 | 日南市・南郷町ため池群 | 宮崎県 | 秋山次徳 | 60 | 43 |
| 計 | 399 | 228 |
※ 湿地保全の基礎資料とすることを目的に、2001年12月に環境省が選定した日本国内500ヵ所の重要湿地。2014年より見直しが行われ、2016年4月22日に「生物多様性保全上重要な湿地(略称:重要湿地)」として633ヵ所を公表している。
データ項目について
以下の表に、データベースファイル内のデータ項目および各項目の説明を示す。
表.データ項目
データ項目 説明
DB_ID 本データベースでのレコード通し番号。
調査地域区分名称 調査を実施した地域の名称。
地域番号 調査を実施した15地域の通し番号。
調査地番号 本データベースでの調査地通し番号。
所在地 ため池の所在地。県・市町村・大字レベルまで記載。
ため池の名称は、希少種等の採集防止の観点から一般非公開とした。
地域メッシュコード ため池の所在地の基準地域メッシュ(3次メッシュ、1キロメッシュ)コード。
詳細な位置情報(緯度・経度)は、希少種等の採集防止の観点から一般非公開とした。
調査者 現地調査および種同定の実施者。
調査年月日 現地調査の実施日。
和名 山ノ内ほか(2019)に基づく標準的な和名。
学名 首藤ほか (2019) 基づく学名。
生育形 「沈水」「浮遊」「浮葉」「抽水」「湿生」の5カテゴリを設け,角野(2014, 『ネイチャーガイド 日本の水草』)に基づき、該当する生育形をとりうる場合は「1」, とらない場合は「0」を入力した。
非掲載種は「ND」としたが、シャジクモ類については、全ての種が沈水状態のみで生育するため、「沈水: 1, その他: 0」とした。
利用規約
- 本データベースは,平成15年度環境事業団地球環境基金の助成を受けて実施された調査「希少水草の生息地としてのため池に関する調査」の成果の一部に基づいて作成された。
- 本データベースのライセンスは, クリエイティブ・コモンズのCC BY 4.0 国際とする。出典を明示する限り自由な利用,加工,再配布を許可する。
- 引用方法は以下の形を推奨する。
- 非営利目的の学術研究、教育活動、保全活動等において、本データベースで非公開としている情報(ため池の詳細な位置情報等)の利用を希望される場合、相談を受け付けます。以下へご連絡ください。