気候変動に対応した持続的な流域生態系管理に関する研究

環境研究総合推進費(2-2001)

気候変動に対応した持続的な流域生態系管理に関する研究

参加機関

持続可能な社会の構築における気候変動適応の重要性への認識が高まる中、生態系を活用した適応(Ecosystem based Adaptation: EbA)への関心が高まっている。特に既存の防災インフラの想定を超える災害の増加が懸念される日本では、地域の自然環境の特性を活かした EbA は今後さらに重要になるものと考えられる。本プロジェクトでは、EbA がもたらす多面的なコベネフィットを明らかにし、地域の自然環境の特性に応じた気候変動適応策の推進が地域の価値向上に寄与することを示すことを目的とし、次の研究を行う。

1)適応力評価軸の検討・定量化手法の開発

現在の適応研究の主流である「予測される将来の条件にシステムを適合させるアプローチ(効率性優先アプローチ)とは異なる、予測不確実性を前提としてシステムを頑健にするアプローチ(適応力向上アプローチ)のあり方を検討する。不確実性を伴う気候変動の進行に対し、生物多様性の重要要素や生態系の主要な機能を損なわないシステムの特徴を解明し、それを定量化する手法を開発する。

2)流域生態系の適応力向上策の検討と実践

関東平野をモデル地域として、自然生態系の適応力向上策を検討する。環境 DNA を用いて生物分布を効率的に把握し、生物多様性ポテンシャルマップを作成し、それを活用した適応力向上アプローチによる生態系管理計画(湿地の効果的な配置、連結性回復計画)を提案するとともに、将来気候予測を用いて適応効果を予測する。同時に、気候変動適応法に基づく地域気候変動適応センターの設置が検討されている千葉県において、千葉県環境研究センター・国立環境研究所・東邦大学の連携により、地域特性を活かした適応策を実践し、予測の(短期的な)検証を行う。

3)適応の多面的コベネフィット評価

自然生態系における適応力向上策が、水質改善・保全、治水、農業といった異なる側面にもたらす効果を評価する。水質の観点では、休耕田や遊水地内湿地が有する水質浄化機能を評価するとともに、多点水質観測の結果を活用して流域内負荷源を面的に把握し、適応策の効果を評価する。治水の観点では、湿地や遊水地の効果的な配置による内水氾濫被害の軽減や計画超過洪水被害の軽減効果を評価する。農業の観点からは、湿地が持つ益虫供給機能の観点から、地域内の湿地や環境配慮型農業の効果を評価する。これらを比較・統合し、多様なコベネフィットが生じやすい条件を明らかにする。


コメントは受け付けていません。