全国湿地データベース

全国湿地データベース(Wetlands Database in Japan)

はじめに

 全国湿地データベースは、環境省環境研究総合推進費4-1705「湿地の多面的価値評価軸の開発と広域評価に向けた情報基盤形成」(H29~31 代表:西廣 淳)の「全国規模の湿地・植生データベースの作成」チーム(チーム代表:冨士田裕子)が作成したものです。作成した「全国湿地データベース」は、「文献データベース」、「湿地データベース」、「湿地植物データベース」の3つのサブデータベースから構成されます。このうち文献データベース、湿地データベースについて公開します。(2020年3月時点)

引用について

本データベースを引用する場合は、以下の形式で引用してください。

冨士田裕子・李 娥英・孫 仲益・倉 博子・首藤光太郎・小林春毅.2020. 「全国湿地データベース」(http://wetlands.info/tools/wetlandsdb/wetlandsdb/

Fujita, H., Lee, A., Sun, Z., Kura, H., Shutoh, K. & Kobayashi, H. 2020. Wetlands Database in Japan (http://wetlands.info/tools/wetlandsdb/wetlandsdb/

なお、今後も更新する予定であるため、確認日を明記して引用してください。

ご利用の皆様へのお願い

 本データベースは、今後も充実にむけて作業を続ける予定です。公開したデータの不備や湿地に関する諸情報などがございましたら、ぜひとも下記にご連絡下さい。データベースのバージョンアップに役立てたいと思います。 

 連絡先:北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園 冨士田裕子 
 住所:060-0003 札幌市中央区北3条西8丁目 Fax:011-221-0664  
 e-mail:hiro[at]fsc.hokudai.ac.jp      ※ [at]を@に変換

本データベースの説明

1. 湿地の定義

 本データベースで取り扱う湿地は、湿った土地に自然植生が成立している場所が存在することとし(=陸域の湿地が存在すること)、以下を対象とする。さらに、面積は原則として陸域湿地部分が 1ha 以上のものを対象とする。

  • 泥炭地湿原:山岳地域や北海道など、低温・過湿な場所で植物遺体から形成される有機質土壌の泥炭が堆積している泥炭地上に、湿原植生が発達している湿原。
  • 沼沢地・湿地:泥炭地湿原を除いた陸域の淡水性湿地。湿性の草本群落が主体で、河口付近のヨシ原、河畔や湖沼周辺、氾濫原の湿性草原などを含む。
  • 湿地林:耐水性の高い樹木が形成する湿性の林(泥炭地湿原や湧水湿地の場合あり)。
  • 湧水湿地:主に地質や地形的な背景が原因で、鉱物質土壌上に地下水が湧き出たり、しみ出したりして過湿な状態が保たれている湿地。東海地方以南に多数分布する。
  • 塩性湿地:汽水湖の周辺や河口域などに見られる、塩分濃度が高い場所に成立する特異的な湿地。主に耐塩性のある小型の草本植物が群落を形成する。
  • マングローブ林:南西域の沿岸の海水が浸入する場所で見られる、耐塩性の高い樹木で形成される林。

 本データベースでは、人工湿地や休耕田跡、陸域湿地をともなわない湖沼、ため池は原則として取り扱わない。陸域湿地面積が 1ha 以下でも、調査がなされ重要とみなされたものは、湿地データベースの対象とした。

2-1. 文献データベース

 全国を対象に湿地の植物相や植生に関する文献を収集した。入手した文献には6桁のIDをふった。データベースは、文献ID(Ref_ID)、著者(Author)、発行年(Year)、文献名(Title)、掲載誌(Journal/Book)、発行者(Publisher)、巻(Volume)、号(Issue)、頁(Page)、湿地ID(WetlandID_xx:1-50列)の59列から構成される。ひとつの文献で複数の湿地を扱う場合があることから、湿地IDの列は50列用意した。なお、巻、号、ページについては、文献に表記がない場合は空欄とした。
 湿地ID列が空欄の文献については、今後作業の進行によってIDが付与される。また、文献内容から湿地の特定ができないものは、湿地IDは付与されない。なお、収集した文献のうち、本データベースで原則として取り扱わない湖沼やため池などの文献については、湿地IDを付与しないが、湿地文献データベースには残した。

2-2. 湿地データベース

湿地データベースは、湿地ID(Wetland_ID)、レベル(Level)、湿地名(Name)、よみがな(E_Name)、備考(Note_Check)、経度(x, lon)、緯度(y, lat)から構成される。

位置の特定:収集した文献に掲載されている湿地について、ArcGIS上で位置の特定を行い、ポイントデータを作成した。湿地の確認は、電子国土基本図(地図情報)、国土地理院公開の空中写真(過去のものも含む)、NTT空間情報株式会社のGEOSPACE CDS、林野庁の空中写真、MicrosoftのBing Maps、GoogleのGoogle Earthを用いた。
文献に掲載されている地図や位置に関する記述をもとに湿地を探索、文献の位置情報があいまいな場合は、同名の湿地に関する他の報告の記述などを参考に湿地を探した。湿地が見つかった場合は、現況の湿地の状態を確認し、中央部付近、あるいは良好な湿地環境の場所にポイントを打った。湖沼の場合は、陸域湿地面積が広ければ湿地の部分に、湿地面積が狭く開水面がほとんどの場合は湖沼の中央部に、ポイントを打った。
文献には湿地情報が記載されていても、現在は消滅したと判断された場合は、ポイントを作成し、備考に「消滅」と明記した。

湿地の名称:湿地の名称は、基本、対象文献に書かれている名称を採用した。ただし、論文内の名称とは異なる通称が存在し、すでに多くの人が利用、現地に看板等が設置されている場合などは、通称を湿地名とした。また、国土地理院の地形図に名称が書かれており、それが文献と異なる場合は、国土地理院の名称、あるいはそれに近い名称を用いた。

湿地IDとレベル:各湿地に6桁のIDを付与した。ただし、本データベースでは、湿地によっては、湿地の名称について階層構造を作成した。たとえば「尾瀬ヶ原」では、広い湿原の一部について名称が存在し(たとえば、尾瀬ヶ原下田代、目無原)、その地域についてのみ調査した文献が多数存在する。文献と湿地IDは連動するようにデータベースを設計したので、この様な特定地域の名称にもIDを付与した。そして、レベルの列に上位の湿地ID(つまりこの例では尾瀬ヶ原の湿地ID)を明記した。

湿地データベース メタデータ Metadata of “Wetlands_Database_20200326”

Wetland_ID湿地の固有番号(6桁整数)
Level湿地のレベル(上記参照)
Name湿地の名称(日本語)
E_Name湿地の名称(よみがな)
Note_Check備考
x経度(10進法)
y緯度(10進法)
lon経度(60進法)
lat緯度(60進法)

GISデータ:湿地の位置をポイントデータとして記録した。

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